松籟聞きたやゴビ沙漠
団長/寺澤隼人

 我々第八次植樹訪中団は九月十六日十時五五分中国東方航空機で北京に向け出発。予定通り十三時四五分北京入りした。
  包頭行き飛行機は約一時間遅れて出発。空港からの専用バスは途中わずかな市街地を除き、ひたすらライトを頼りに闇の中を進み夜中の十一時過ぎ、宿泊先の達拉特旗政府賓館に到着した。

遠の灯の蒙古の闇やそぞろ寒

 翌日、午前中駱駝に乗り沙漠の現地体験。沙漠への途中、黄河支流の断流している河原をバスは渡渉。大自然のいとなみの前に唯々頭を垂れるのみであった。

目の当り黄河断流底知れぬ
     大地の乾きいとど悲しも
秋の声風紋わずかに動きたり

 我々は、その後日本産業開発成年青年協会が地元青年団と植樹した「日中青年の森」を視察。物見櫓から来年以降「税理士の森」として幅一キロ、奥行五.八キロの候補地を遠望した。
  その後一行は、「税理士の森」管理人の卓日瑪さん宅に伺い、心尽しの牧民料理を戴いた。
  さて、食後吾々は愈々植樹である。クブチ沙漠は比較的柔らかい。スコップで約八十センチ程堀り、百五十センチ位に成長したポプラの苗を下し土を少し戻し、踏み固めて灌水する。水の引くのを待って全部土を戻す。野兎除けの金網を巻き付けで完了。地元ダラトキ第一上級中学校の生徒の強力な応援を得た事に心から感謝する。

内蒙古凛々しき少女馴寄り来て
     手植のポプラしかと支える

九月十八日は東勝へ。

 東勝は市政府が置かれ、その発展は目覚ましい。しかし、市街地を一歩出ると点々と廃屋があり痩せたキビ畑が続く。悪路に祟られ、目的地に遅れて到着。

キビ嵐黄河の土塊乾きゆく

 我々は挨拶も簡単に寸ぐ植樹に入る。ここでの植樹は水平溝という方式である。(財)日本産業開発青年協会や地元青年団の永年の経験則から生み出されたものであり、道理に適っている。ここでも地元上級中学校の生徒、更に地元の村民の皆さんの強力な助っ人を得て、何とか目標の苗を植え終えることができた。

共に来てオルドス台地松植うる
     ツルハシはじく固き大地よ

 モア・グリーン、ゴビ税理士基金は、美しい地球を未来に残すため、地球環境の保全に寄与することを目的とし活動している。吾々はゴビ砂漠の緑化活動を通じて、まさに草の根外交を推進しているが吾々の訪中による移植活動は自ずと限界がある。従って、この運動が一定の成果をあげているのも(財)日本産業開発青年協会理事長太田誠一さんを中心とする地元青年連合会の協力に負うところ大であることを銘記しなければならない。
  然し、「大海の一滴」であっても「点滴岩をも穿つ」である。
  今回もそうであったように、地元の熱烈な歓迎とご協力を戴き、且つまた、今回インフラ整備中の高速道路の未開通の道路を先を急ぐ吾々のために敢えて使用させてくれたこと、地元の皆さんの感謝の顕れと素直に受け止め、吾々は緑化運動を更に強力に推し進めていかなければならない。

霹靂神(雷)ゴビ沙漠に賜れよ
     慈雨ともなりて吾らが植樹


成せば成る放牧いさめ牧畜に
     沙漠化防ぐ森のいしずえ

                        謝々