もう一度、貴女に
団員/西守 義彦

 内蒙古、晴天。地下足袋にタンクトップ、グラサンに首タオル。土方がいる。そして寄り添う少女がいる。紅い頬に丸眼鏡、漫画のアラレちゃん似の女子高生だ。二人はまるで恋人同士の様に、見方により爺と孫の様に時に笑い、語らい、そして穴を掘る。やがて来る別れの時、せめてもと差し出されたサイン帳に英文で名を記す。バスの窓越しにゴビ沙漠が涙で翳む。
  翌日の相手は男子生徒だったので黙々と穴を掘っていると、途中から謎の美女が加わった。歳の頃なら25〜26か、ジーンズに引っ詰め髪が妙に色っぽい。そして私の傍らを離れない。団長から帰還の合図、身振りで帰ると告げるが、イヤイヤをして次の穴を指差す。「しょうがない子だね、じゃあもう一個だけだよ」、アホか?
  女房の一周忌が過ぎて最初の旅に植樹を選んだ。センチな感傷と笑われてもいいが、涙もろく情に流され易くなっている自分を強く感じる旅だった。いつかまた行きたい、貴女に逢いに。