緑の大地を夢見て
寺端 正

 足下から地平線に向かって山吹色の樹木が鬱蒼と広がっている。
  ここは、アマゾンであろうか?
いや、ここは不毛の地と言われたゴビ砂漠である。
  しかし、今見る光景は、熱帯雨林と見間違う程の広陵たる樹海である。
 この森は道しるべが無ければとても抜けられそうにない、ここは半世紀以上も前、地球環境の改善を志した日本人によって、一本の植樹から始まった。その志は見事に花開き、かっての赤茶けた大地は緑で覆いつくされている。

 ケタタマシイ中国語が耳に響く、ふと我に返った。その声は成田空港着陸のアナウンスである。・・・夢か・・・・・!

 最初の植樹を思い出す。
 午前中、ダラトキのホテルを出て、水のない川底を2キロ程走り、やがて、百メ−トルはあるだろうか? 高い山が連なる場所へとたどり着く、息を切らせてその急坂を登った。そこは紛れも無い、月の砂漠の世界である。幾重にも重なる砂山、そんな光景をラクダの背に揺られて眺め、今年の植樹地に向かう、日本の中学生か・・? 見分けがつかない。それほど日本人に似ている。背格好は元より、顔の輪郭や行動も・・・実に良く似ている。遠い昔、祖先は一緒か?
  彼らは微笑みを浮かべ話しかけてきた。中国語が皆無である。それでも、何とか身振り手振りで彼らと植樹を終えた。
  彼らの目は輝いていた。高い希望と目標を掲げ、実に良く勉強するという。その行動力と辛抱強さ、その意欲を日本の子供にも分けて貰いたい程である。彼らもまた植樹の意味を理解しているのであろう・・・、熱心に協力してくれた。
  植樹地には既に数年前のポプラが大きく育ち、その木陰で涼を取れる程である。作業は順調に進み、林を後にするとき、数年前のポプラがささやいた。
  “今年の木も大きく育つよ”と・・・・何かホットしていた。
  バスはハイウエーを反れ、次の植樹地へ向かう。砂埃の舞う曲がりくねった大地を慎重に進んで行く、急に止まった。ワダチに嵌り腹が支えたようだ。スコップの持ち合わせが無い、全員で周りの泥や枯れ木をワダチに集める。この先も喘ぎ喘ぎである。到着が遅れる。
  松の植林地は小高い山の上にあった。既に、村人が集まっている。赤銅色の日焼けした顔は、草原の民そのものである。祖先から何代も続く、その土地に馴染んだ顔だ。その顔にも感謝の気持ちが現れ人懐こく話しかけてくる。言葉は通じない。でも、交流は出来た。
  高校生も参加した。かなりの人数である。粒子が細かく、保水性の無いこの土地は、たまに降る雨も、表面の土砂を押し流し、とどまることを知らない。そんな過酷な条件に植林をする。大きな穴を掘り、その中へ小さな穴を、そして、松を植え、水を流し込む、結果は高い活着率である。これも人の知恵、見事なものである。来年の予定地がここからは望める。
  いつの日か、この高原は立派な松の森に変わるであろう・・・そのことを確信した。
  「美しい地球を未来に残す」
 モア・グリーン・ゴビ税理士の森の夢が又ひとつ膨らんだ。