緑の大地へ

大久保久美子

 内モンゴル自治区オルドス市ダラトキ、トルーマ氏宅の畑ではトウモロコシの収穫が終わっていました。羊や山羊が囲いの中に入れられ、鶏があちこちで餌を啄んでいます。家の向こうには黄色く色付いた小葉ポプラの林が広がり、ごく普通の平和でのどかな田舎の風景です。
 植樹団が入る前はクブチ沙漠が家の後ろまで迫り、畑も作れなかったそうです。植林されたポプラ林を歩くと、草が生え砂は土へと変化して足にしっかりとした感触が伝わってきます。ハーブなのか枯れた草から良い匂いが立ち込める場所も。近くには幼木を根付かせる為の人工池も作られて、今は周りに葦さえ生え始めていました。「十数年前には沙漠だった」と、言われなければわからないでしょう。樹木の大切さを感じる瞬間です。
  お昼にトルーマ氏宅で奥さんのマトン料理をご馳走になった後、払い下げの軍用車で植林地に向かいます。かなりの傾斜の砂地も物ともしない優れものです。地元の青年達と、二百五十本のポプラの苗を瞬く間に植え終わりました。雨が少し降ったそうで植林するには最高のコンディションでした。後日、基金で一万本のポプラを植える予定だと伺いました。
  ダラトキの青年達と別れ、第二の植林地オルドス台地の東勝へ。侵食は凄まじいばかりです。地元村民やボランティア中学生と共に、用意された二千五百本の松の苗木を次々と植えていきます。村民女性とも意気投合して、石ころ混じりの固い土も苦になりません。
  流石に限られた時間では全部植えきるわけもなく、後は村民に託しましたが充実した時間でした。これまでに植えられた松が、遙か彼方まで続いている光景は本当に嬉しく、「根を張って大きくなれ!」と声を掛けたくなります。荒れた大地が、緑豊かな地になってくれることを心より願うものです。