内緒の話

菊池 賢

 中国・内モンゴル自治区植樹団への参加が決まったのは、出発日の約1ヶ月前であった。
  今回の植樹団は参加人数が少なく、倉又団長が家族の反対を押し切り参加するという話を耳にした。
  家に帰り、その話を奥様にしたところ、「それはあなたも行かなければダメダヨ」と言われ、即決で倉又団長に参加の意思を伝えました。
  それから中国語の勉強である。書店で「中国語初歩の初歩」(CD付き)を購入し、朝は電車の中で、夕には事務所の近くの居酒屋で中国人の小姐を相手に個人レッスンを積み、万全の体制で臨んだつもりだった。
  植樹初日、税理士会の森を管理していただいているトルーマさん宅で昼食をご馳走になった。ミルクティーと羊の肉とジャガイモを塩でゆでた肉じゃがであった。おもてに剥がしたばかりの羊の毛皮を干してあったのが気にかかったが、これが絶品でその後毎日、中華料理を食したがこれが一番おいしかった。
  食事が終わり、これからいよいよ植樹である。トルーマさんの奥さんに謝謝(ありがとう)と感謝の言葉を述べ、次に好吃(おいしかった)と言ったところ、何と自分の胸を両手で持ち上げにっこりと笑うではないか?好吃が日中チャンポン語の好乳(チチが好き)と通じてしまったのか?あれほど勉強した中国語が通じなかった?それとも奥さんのジョークか?幸いな事に周りの誰もこのことに気がついていなかった。内緒の話でした。
  帰国前日の7月20日、最後の夕食会で私の59回目の誕生日を皆さんからお祝いしていただきました。突然だったこと、ケーキが大変おいしかったこと、大感激でした。
  皆さんありがとうございました。